エンセファリトゾーン症とは?

エンセファリトゾーン症とは 健康情報

エンセファリトゾーン症は、エンセファリトゾーン症は、「エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoon cuniculi)」という微胞子虫の一種に感染することで起こる、ウサギで比較的よくみられる感染症です。主に脳や脊髄などの神経系のほか、眼や腎臓にも影響を及ぼします。

 この病気の不思議かつ大きな特徴は、感染したすべてのウサギが発症するわけではないことです。感染していても一生症状が現れないウサギも多く、「感染=発症」ではありません。

日本で飼育されているウサギの調査では、健康な多頭飼育のウサギでは約75%、神経症状のあるウサギでは約80%がエンセファリトゾーン・クニクリに対する抗体を保有していました。一方、健康な単独飼育のウサギでは約30%であり、飼育環境によって感染状況が異なることが報告されています。

このように感染経験のあるウサギは珍しくありませんが、実際に発症するのはその一部と考えられています。

発症すると、首が傾く(斜頸)、ぐるぐる回る(ローリング)、後肢麻痺などの神経症状のほか、白内障やぶどう膜炎などの眼の病気、腎障害などを引き起こすことがあります。

首が傾く症状はエンセファリトゾーン症だけでなく、中耳炎・内耳炎などでもみられます。また、エンセファリトゾーン症自体も生前に確定診断することは簡単ではありません。そのため、診察や検査結果、経過などを総合的に判断しながら治療を進めています。

どのように感染するの?

 エンセファリトゾーン・クニクリは微胞子虫と呼ばれる微生物の一種で、感染したウサギの尿中に「胞子」という感染源となる形で排泄されます。 この胞子を口から取り込むことで、他のウサギへ感染すると考えられています。また、妊娠中の母ウサギから胎盤を介して子ウサギへ感染(胎盤感染)することも知られています。

ただし、感染したウサギが常に病原体を尿中へ排泄しているわけではありません。感染後およそ1か月頃から尿中に胞子が排泄され、主に感染後3か月程度までみられます。その後も少量の胞子が断続的に排泄されることがあります。

感染後にどのようなウサギが発症するのか、その仕組みについては現在も十分には解明されていません。

どのような症状がみられるの?

エンセファリトゾーン症では、病変ができた部位によって現れる症状が異なります。

神経症状

最もよくみられる症状で、

  • 首が傾く(斜頸)
  • ぐるぐる回る(ローリング)
  • 眼振(目が細かく揺れる)
  • ふらつく
  • 起立できない
  • 痙攣(まれ)

後肢の症状

  • 後肢がうまく動かない
  • 後肢麻痺
  • 尿失禁
  • 自力で立てない

眼の症状

  • 白内障
  • ぶどう膜炎

特に若いウサギで片側性の白内障やぶどう膜炎がみられた場合には、エンセファリトゾーン症も重要な鑑別診断の一つです。


腎臓の症状

  • 多飲多尿
  • 慢性腎障害

神経症状のように目立たず、血液検査などで初めて分かることもあります。

このような症状があれば、早めの受診をおすすめします。

  • 首が急に傾いた
  • 同じ方向へぐるぐる回る
  • 後ろ足が動かない
  • 白く濁った目になった
  • 食べられない

どのように診断するの?

エンセファリトゾーン症は、生前に確定診断することが難しい病気です。

診察でみられる症状や眼の異常などを確認し、必要に応じて血液検査や画像検査を行います。これらの検査にもエンセファリトゾーン症に特有の所見があるわけではないため、他の病気の可能性も検討しながら総合的に診断します。

また、抗体検査を行うこともありますが、抗体が陽性であっても「エンセファリトゾーンに感染した経験がある」ことを示すもので、それだけで現在の症状がエンセファリトゾーン症によるものとは判断できません。

一方、抗体が陰性の場合には、エンセファリトゾーン症以外の病気を考える重要な材料になります。ただし、感染初期にはまだ抗体が十分に上昇していない場合もあり、陰性だからといって完全に否定できるわけではありません。

このように抗体検査だけで発症を判断することは難しいため、当院では抗体検査を必須とはせず、症状や経過に応じて必要性を検討しています。

症状がエンセファリトゾーン症に一致する場合には、確定診断を待たずに治療を開始することも少なくありません。

治療について

 エンセファリトゾーン症では、病原体の増殖を抑える治療と、症状に応じた治療を組み合わせて行います。 現在、最も一般的に使用されているフェンベンダゾールは、エンセファリトゾーンの増殖を阻害する作用をもつ薬です。 ただし、体内に存在する病原体をすべて駆除する薬ではないため、一定期間の治療によって病気の活動を抑えることを目的に使用します。

治療を行っても、首の傾きや後肢の麻痺などの後遺症が残ることがあります。しかし、これは必ずしも薬が効かなかったことを意味するわけではありません。神経が一度障害を受けると完全に回復しない場合もありますが、多くのウサギは後遺症と上手に付き合いながら生活することができます。

また、食欲が低下した場合には、強制給餌や水分補給などのご家庭でのサポートも治療の重要な一部です。

ご家庭での看護

エンセファリトゾーン症では、ご家庭でのケアが治療と同じくらい重要になることがあります。

特に神経症状が強いウサギでは、自分で十分に食べたり飲んだりできなくなることがあります。ウサギは食べない状態が続くと胃腸の動きも悪くなるため、必要に応じて強制給餌や水分補給を行います。食欲が低下した場合には、早めの対応が大切です。

また、首が傾いたり、ぐるぐる回ったりするウサギは転倒しやすくなるため、ケージ内には滑りにくいマットを敷くなど、ケガをしにくい環境を整えてあげましょう。

排尿や排便がうまくできているか、食欲や体重に変化がないかを毎日確認することも大切です。

強制給餌の方法については、別ページで詳しく紹介予定です。

他のウサギにうつるの?

尿中に排泄された胞子によって他のウサギへ感染する可能性があります。ただし、感染したウサギが常に胞子を排泄しているわけではなく、感染しても発症しないウサギも多くいます。

そのため、同居しているウサギを必ず隔離しなければならない病気ではありません。 日頃からトイレを清潔に保ち、尿で汚れた場所をこまめに掃除するなど、通常の衛生管理を心掛けましょう。ご家庭では必要に応じて、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)や市販の70%程度のアルコール消毒剤を使用することも有効です。

よくある質問(Q&A)

Q. 人にうつりますか?

健康な方が発症することは非常にまれです。ただし、免疫力が著しく低下している方では感染が問題となることがあります。尿を扱った後の手洗いや、尿で汚れた場所をこまめに清掃するなど、基本的な衛生管理を心掛けましょう。

Q. 再発することはありますか?

一度症状が改善した後に、同じような症状が再び現れることがあります。 臨床的にも再発は珍しくありませんが、どのくらいの割合で再発するのかは、現在のところ明確には分かっていません。また、体内に残ったエンセファリトゾーンの再活性化によるものなのか、再感染や残った神経病変などが関係するのかについても十分には解明されていません。

Q. 何歳くらいで発症しますか?

子ウサギから高齢のウサギまで、どの年齢でも発症する可能性があります。 若いからエンセファリトゾーン症にならないというわけではありません。また、胎盤を介して母ウサギから感染した場合には、若いうちに眼の症状が現れることもあります。

Q. 抗体が陽性と言われました。病気ということですか?

抗体陽性は、エンセファリトゾーンに感染した経験があることを示します。健康なウサギでも抗体を持っていることは多く、抗体陽性=発症ではありません。

Q. 首の傾きは治りますか?

治療によって改善することもありますが、首の傾きが後遺症として残ることもあります。 しかし、後遺症が残っても普段どおり食べたり遊んだりしながら生活できるウサギは多くいます。

Q. 一生薬を飲み続ける必要がありますか?

フェンベンダゾールを一生飲み続ける必要はありません。 当院では通常4週間を目安に投薬し、その後はいったん終了して経過をみています。フェンベンダゾールは、飲み続けることでエンセファリトゾーンを体内から完全に排除する薬ではないため、症状が落ち着いた後も予防的に長期間飲み続けることを通常はおすすめしていません。

また、長期間飲み続けることで再発を防げるという十分な根拠もありません

その後、再び同様の症状がみられた場合には、状態を確認したうえで再度治療を行うことがあります。

Q. ワクチンで予防できますか?

現在、エンセファリトゾーン症を予防するワクチンはありません。

Q. 抗体検査は受けた方がいいですか?

症状のないウサギでは、抗体検査だけで将来発症するかどうかを判断することはできません。そのため、すべてのウサギに検査をおすすめするものではなく、症状や状況に応じて検討します。

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日本のウサギの抗体保有率

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